駅のトイレに入ると
壁に湿布が貼ってあった。
「なぜ・・・?」
そう問いかける僕に、湿布は答えてはくれない。
僕は用を足しながら横目で湿布を見つめる。
「もしかして、この湿布の裏に何かメッセージが書かれているんじゃないか?」
僕がその湿布を剥がそうとしたとき、
コンコン、とドアがノックされた。
ノックに対し、僕はノックで応答する。
そう、僕はここに、いる。
用を足している。
ノックに遮られたので、もう一度湿布に手を伸ばす。
すると、またコンコン、とノックがする。
今、入っているって応答したばかりなのに・・・!
せっかちな奴だ。
相当漏れそうなのだろうか。
「おやめなさい」
外から声がした。
「あなたが今剥がそうとしている物、それは奇跡の一枚なのです」
「えぇ!?奇跡の一枚だって!?」
僕は驚いた。
ふりをした。
というか、さっきから外の人は何を言っているんだ?
早く用を足したいからといって、中にいる僕に話しかけるのはやめてほしい。
でも、奇跡の一枚って・・・
どういうことだ?
この湿布が奇跡?意味が分からない。
「奇跡が・・・気になるようですね」
僕の心を見透かしたように、外のやつが言った。
「ならば教えましょう。奇跡の意味を」
特に何も言っていないのに勝手に語りだした。
「あなたは経験があるかもしれませんが、急な腹痛に襲われて駆け込んだトイレ、すっきりした後に紙がなかったらどうするのです?」
そういう経験は確かにあった。
その時、僕は店員さんを呼んだんだ。
「あなたはトイレットペーパーの芯を使うかもしれない、でも、それでも足りない。その場合、どうするのです?」
「ど、どうするって・・・手で拭けというのかよ?」
「まだ分からないのですか?奇跡の意味・・・」
そこで僕は、気づいた。
こいつの言いたいことが分かった。
「この湿布で・・・拭く、ということか・・・?」
「やっと理解したのですね。そうです、絶望の中、紙の変わりになる存在。まさに神のような存在に成り代わる湿布。諦めていたその時、壁に湿布があったらどうします?使うでしょう?使わざるをえないでしょう?それこそ、まさに奇跡!」
「・・・!!」
すげえ、確かに・・・そうかもしれない。
この一枚の湿布が奇跡の一枚になるかもしれない。
それにしてもトイレで熱弁する外の人は一体何なんだろう。
きっと変態さんに違いない。
とか色々妄想してみたけど、これはねーわ。
壁に湿布貼るなよ。
ゴミ箱あるんだから、そっちに捨ててよ。
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コメント一覧 (2件)
爆笑しました(^O^)
今回は養命酒の効果あるといいですね!
にゃんたろうさん>
ほんと、効果が早くでればいいなと思います。