台風がきて僕は言った

「台風が近づいているみたいなんですが、何とかお帰りになっていただくことはできないでしょうか?」

僕の言葉に、一同は唖然としていた。

「台風っていうのは、名物だ。無理やり帰すことをなかろうに。」

年配の方がそう言うのと同時に、周りの人も賛同し始めて、ざわついてきた。

「わかりました、わかりましたから。落ち着いてください皆さん。じゃあ、こうしましょう。ちょっと早めに来ていただくというのは・・・」

「駄目だ!!」

僕が最後まで言葉を発する前に遮られた。
人の話は最後まで聞けっての・・・。

「なんで駄目なんですか!?寝ている間に来てもらって、皆が起きる頃には太陽が出ているというのが理想だと思うのですが?」

「これだから最近の若いもんは・・・。いいか?台風が来るということは、ニュースのネタに困ることがなくなるんじゃぞ?つまり、緊急特番を組むことによって、テレビ局ではその日の特集を先延ばしにすることができるから、余裕がでるんじゃよ。」

「え?え?そんな理由で?いやいや、仮にそれが本当だとしても、台風が直撃しない地域はどうするんですか?緊急特番なんて見ないですよ?」

「そんなことは知らん。きっと地方でも台風マニアがいて、台風被害の様子をニュースで見たがるじゃろう。地方番組を見つつ、全国テレビを見ればいいんじゃ。」

「いや、だからといって・・・」

「ならん!」

「いや、まだ何も言ってないんですけど・・・。」

「とにかく、ならん。台風には来てもらう。早々に帰ってもらうことは許されん。よし、今日はこれで終いにしようか。皆、解散。」

皆、僕を一瞥すると早々に立ち去った。

「僕は・・・間違っていない・・・。昼間に来てもらうよりも、夜の方が良いに決まってる。」

そのとき、僕の隣に1人の男が来た。

「夜に働いている人たちもいるんです。無理に台風を早めてもらっては、彼らに被害が出ます。台風は自然のもの。ならば、身を任せるのが人間ではないでしょうか?」

「けれど・・・!人間はそれに抗ってきた!!」

僕は精一杯に声を発した。
それは怒声に近かったかもしれない。

「そうですね。確かに人間は自然の脅威から逃れるべく試行錯誤してきました。けれど、結局は勝てていない。」

「勝ち負けじゃない!!」

さっきから何を苛立っているんだ僕は。
なぜこんなにも台風のことに真剣になっているんだ?
ちょっと熱くなりすぎたようだ・・・。
今日は、もう、寝よう。
ということで、あんまし台風には活躍してもらいたくないです。
明日は。

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コメント一覧 (5件)

  • 色んな妄想の可能性があるね。1つに・・・
    お互いの主張は交わらない。妥協して、日中働く人達へは夜間の台風。夜の人達へは日中の通過とする。あくまでも同一次元で起きる摩訶不思議な現象。2つは決して交わらない。普通のサイクルで生活してれば台風に晒される危険が無く、時間外に外へ出ようとすれば台風の猛威に晒される事となるだろう。ずぶ濡れになる人と、全然へっちゃらな人とが混在するとしたら・・・。
    ある日、日勤の女性と夜勤の男性が夜にデートを。待ち合わせにびしょ濡れになった彼女がやってくる。不審に思った彼氏「こんなに夜空がきれいなのに一体どうした?」うんぬんかんぬん・・・。「すっかり体が冷え切っているじゃないか。・・・温めてあげるよ・・・」交わらない話もここでハッピーエンド。交わったとさ・・・。

  • 俺の県にだんだん台風が近づいて来てます。そのおかげで今日はもう・・・暑い!昼寝してても汗が出ますからね;
    思い出すな~。台風の風を利用してトイレットペーパーを空に飛ばしたことがあったな~w

  • フフフ…台風の目って何かやらしいですねww(゚∀゚)
    どうも僕です。いやー台風凄かったですね!OLさん達が傘をさしながらも飛ばされてしまう状況に、『ダメって分かってもアタシったら…』なんて素晴らしいストーリーを脳内で再生してました。新宿駅前でww

  • 刹那の風さん>
    うまい!
    まさにハッピーエンド!!
    台風が恋愛短編小説になるなんて・・・。
    ユースケさん>
    今頃はもう通過したでしょうか?
    台風は心にどんな爪跡を残したのでしょう・・・。
    Pitosh!さん>
    アレです。
    アレ以外のなにものでもないです。
    珍遊人さん>
    あれ、台風の穴らしいですよ。
    でも穴だと響きがやばいから目って・・・。
    OLさんは願ったんだと思います。
    空を羽ばたく鳥になりたいと。

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