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至福の納豆時間を大事にしよう。

久々に納豆を購入。
更にネギも購入。


一ヵ月半ぶりのヌルネバ時間を堪能。
これで胃も潤う・・・!
はず。

「いいえ、そんなことでは胃は潤いません」

僕が意気揚々と納豆を食べていると、声が聞こえた。

「うるせえよ、誰だか知らんけど、俺の納豆時間に茶々入れないでくれますかね?」

僕は怒りを露にした。
だって、久々の納豆時間でテンションが上がっている胃袋に余計な刺激を与えたくないんだもん。

「納豆で胃を潤す?ははは、悲しいくらいに笑えますね」

「そうだね、笑えるね。笑えばいいじゃん。だから邪魔しないでよ、俺の納豆時間」

僕はこいつを無視することにした。
こいつの言うことに構ってたらイライラしてしまって、胃に良くない。

「あれ?何かイライラしてませんか?図星さされて腹立ちましたか?」

完全無視。
こいつの言葉に耳を傾けるのが勿体無い。
僕の耳は、納豆を混ぜる音だけを拾っている。

「かき混ぜるの下手ですねえ。それにしても、本当に汚い音ですよね、その納豆かき混ぜ音。下品すぎて反吐がでちゃいそうですよ」

勝手に反吐でもヘドロでも出してればいい。

「おやおや、完全無視ですねえ。しかしその糸、汚いですよね。普通の糸ならまだしも、臭いっていうオマケ付きですもんね。テーブルに落ちて、拭こうものなら伸びちゃいますもんね。あ~、やだやだ」

はいはい、そうですね。

「おっと、すすりましたね?今、納豆をすすりましたね?うわー、なんて汚い音。なんてみすぼらしい音。この世の中の汚い音ベスト5に入るんじゃないですかね?ちなみに他の汚い音っていうのは・・・」

「うるせーよ」

僕はもう我慢できなかった。
納豆時間の最中に、臭いだの、汚いだの、最低だの、キモイだの言われ続けてたらいい加減、キレてもいいと思った。

「あれ?無視はやめたんですね。良かった。これでやっとお話しができますね」

「話すことなんてねえよ。お前、黙る気はないんだな?」

「黙る?意味が分かりませんね。黙る必要はないと思います」

「そうか・・・わかった」

ガタンっ!!

席を立ち、そいつの胸倉を掴む。

「おおっと、暴力ですか。無視の次は暴力ですかー」

「ああそうだよ。暴力だよ。お前が黙らないなら、もうこうするしかねえんだよ。俺の大事な納豆時間を邪魔しやがって・・・!許せねえ・・・!」

渾身の力を込めて、拳を振り上げた。

「やめてッッ!!!」

「え!?」

突然の声。
誰だ?
まさか・・・お前なのか・・・!

「そうだよ、僕だよ。納豆だよ」

驚いたことに、仲裁に入ったのは納豆だった。

「今まで、散々文句を言われてきたのに・・・。何で止めるんだ?こいつが憎くないのかよ!俺は憎い!先月からの納豆不足から、やっと・・・やっと納豆を夕飯にできたっていうのに、至福の納豆時間を邪魔されたんだぞ?俺とお前の大事な時間を邪魔されたんだぞ!?」

「分かってる・・・。でも、駄目だよ・・。憎しみは・・・何も生まないよ。二人とも、僕で争うのはやめてよ・・・。」

納豆が泣き出す。
粘りが更に増す。
僕は振り上げた拳を下ろした。

「すまなかったな、納豆。俺がバカだったわ。ムキになって、せっかくの大事な納豆時間をこんなことにしちまって・・・」

「ううん、大丈夫。今からでも納豆時間はやり直せるよ」

そう、まだやり直せる。
だってまだ納豆は2パック残っているのだから。

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