バスに乗っていると、後ろの席から会話が聞こえた。
「書くよね~」
「うん、書く書く」
何を書くのか・・・?
僕は2人の会話に耳を傾けた。
「やっぱり授業中に書くよね~、手紙」
「うん、書くよね」
手紙。
またの名をレター。
それは人の想いを乗せる紙。
2人はどうやら中学生くらいみたいだ。
そういえば、中学高校のときって授業中に隠れて手紙を書いていたりしたな・・・女子が。
「私、一番前の席なんだけど、この前手紙書いてたら見つかって没収されたぁ」
「マジで?」
「うん、後で返してもらったけど・・・今はそれをする時間じゃないって言われた」
あ、当たり前じゃないか・・・。
一番前の席で書いててバレないと思うその考えがスゴイ。
さすが恐れを知らない学生・・・!
うらやましい。うらやましいっす。
それは僕が失くしてしまったものです。
会話は続く。
次第に恋愛の話へと・・・。
「○○くんってほんとカッコイイよね。あれで部活に燃えてたらマジで惚れる」
「うん!そうそう、マジかっこいい。でも部活に対して適当だからね~」
「授業終わったら、俺は部活行くぜ!!って気合入れながら廊下走っていってほしい!」
いや、いないだろ、そんなやつ。
そんな状況を頭に思い浮かべ、思わず笑いそうになるのを堪える。
部活に燃えているのか、部活に萌えているのか。
「○○くん、マジかっこいいんだけどね~。それがね~」
「もしかして○○くんに惚れてる!?」
「いや~、惚れてないって、そこまでのレベルに達してないって」
「じゃあ、××くんとかは!?」
「いや、××くんは駄目でしょ、もうちょっと顔がさ~略~」
「△△くんとかもイイ線いってんじゃない?」
「でも△△くんは恋愛対象にならないよ、顔が微妙かなって思う~略~」
お前らどんだけ上から目線なんだ・・・!!
僕は思わず座席を立ち上がり、後ろを向いてしまった。
「おごるな小童ども!!それだけ言うってことは、お前たちは相当可愛いってことだよな!!」
僕は会話に出てきた男達の気持ちを代弁してあげたかっただけなんだ。
別にこれが、男女平等が謳われるこの世の中の歪みの兆しだなんて思っていない。
静かなバスの中で僕の声は響き渡った。
もちろん、他の乗客の視線も僕に集まる。
「な、なにこの人・・・?キモいんだけど」
ほら、出た。「キモい」。
もう今や二言目には「キモい」ですよ。
キモくなくてもキモい。
キモくてもキモい。
好きでもキモい。
嫌いでもキモい。
可愛くてもキモい。
可愛くなくてもキモい。
なんて便利な言葉。
「キモい」も変わったな。
と時代の流れをしみじみ感じつつ、そんな妄想をしているとバスが着いた。
「さてと、降りるか」
この歪んだ世界から。
コメントを残す
コメント一覧 (5件)
まかない様こんにちは。
人間は戦い続けなきゃ…って超まじな話ですね。
一時休戦して、クリアファイトです!
こういう妄想しますよね。どこまでも。
一瞬本当にまかない様が言ったのか!?と騙されました…クソーw
二人以上集まるとこのような会話を繰り広げるのが女子ですね。
「キモい」ってリアルに言うしね。
…恐れを知らない学生…同じく失くした気持ちですw
…一番前の席で寝ていた頃を思い出しましたw
失礼ノシ
『上から目線』
そんな言葉、ずっと昔に捨ててきました。
(そんな時代が私にもあったわ~)
男子が、廊下ですれ違う女子を見て
「30点 60点」と
3の倍数の時にも、倍数でない時も、アホ丸出しで点数をつけていたのを思い出しました…
最近バスや電車にのらないので分かりませんが中学生の会話は宇宙人のような会話ですね。
人観察に意味も無くバスにのってみようかな?
中学生、高校生
その年代は自分の事はそっちのけなのですよ。
芸能人で誰が好き?
えっと、強いて言えばXXかなぁ。。
強いてってどういうことだ?
この一般ピーポーの貧乏人どもが何を言ってやがる!
相手は年収何千万も稼ぐジャニーズ様だぞ
しかし、そんなのはどうでもいい話なのです。
桜。さん>
人生は日々戦いっす。
キモいはもう標準語っすからね・・・。
ば~むく~へんさん>
3の倍数・・・。
時代先取りナベアツ・・・!!
まゆりぐまさん>
いや、中学生だけではありません。
バスの中と電車の中は宇宙です。
たかぽんさん>
自分のことしか見えない。
そのとおりかもしれません。
でも大人になっても自分が見えていない人もいます。
そう、僕のように・・・。