どうでもいいこともある

桜が舞っていると思ったら、雪だった。
せっかく暖かくなってきたというのに急激に気温が下がり、雪。

「空気読めよ・・・」

僕は雪に文句を言う。

「は?読んだんですけど?読んだから降ったんですけど?」

文句が返ってきた。

「暖かくなってきて、花粉がつらいつらい!っていう声がたくさん聞こえたから降ったんですけど?」

なるほど。
確かに僕は花粉に悩まされていた。
暖かくなるのは嬉しいことなのだが、花粉という宿敵が目を覚ますのである。
一日中、目のかゆみと垂れ流しの鼻水と闘い、飲むと症状が軽くなるけど、睡魔に襲われる薬と睨めっこの日々。
それを考えると、確かに雪の言い分もわかる。
文句も言いにくくなった。

「すまん、確かにお前の言うとおりかもしれない。空気を読めてなかったのは僕の方だったのかもしれない・・・」

僕は頭を下げた。
綺麗な45度姿勢。
けれど雪からは特に返事はなかった。
道行く人からすれば、僕は誰もいない空間に頭を下げている変な人だろう。

「ママー、あの人なにしてるのー?」
「しっ!見ちゃいけません!」

なんていうありきたりの会話だって聞こえてきそう。
でも僕は、精一杯感謝の気持ちを体で表していたんだ。
やがて頭をあげて、空を見ると雪が降り続けていて・・・
夜なのに少し明るい。
そして思う、僕は何がしたかったんだろう。

「きっと何もしたくなかったんだよ・・・」

どこからか、雪が囁く。

「何もしたくないけど、何かしなくちゃ生活できないんだよ」

「そうかもね・・・。だからそんな荒んだ心の君にプレゼントだよ」

「何を・・・?」

「明日の朝、起きてすぐにカーテンを開けてごらん。一面の雪景色をプレゼントするよ」

正直、いらない。
本気でそう思った。
雪が積もったらバイクで通勤できないじゃないか。
けれど僕は笑顔で応えた。

「あ、ありがとう・・・」

「礼を言われるほどのものではないよ。温暖化してるしてる詐欺の人間社会にはちょうど良い刺激になるだろうしね」

温暖化・・・
そういえばそうだった。
本当にしているのかな、温暖化・・・。
付き合い始めたカップルや、恋に恋している人たちは心が常に温暖化現象だけど・・・。
どうでもいいか・・・。
温暖化現象で明日の朝には雪が溶けていてくれると嬉しいな。

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