時は遡り、コロナ感染症が大流行していた時期のこと。
F社長は全社員に言いました。

弊社のような中小企業は、1人でもコロナウイルスに感染した場合に会社が傾き、緊急事態に陥ります。つまり、倒産する可能性があると考えてください。
ざわざわ・・・。
社内がどよめきます。
僕はといえば、コロナ感染で会社が倒産危機に陥るほど、弊社の経営は厳しい状態なのかと思いました。
そして、F社長からコロナ対策が打ち出されます。
- 社内に出入りする場合は、必ず手指の消毒をすること。(マスクも必着)
- 社内のデスク周りも毎日清潔に保つこと。
- もちろん、自宅での感染症対策も怠らないこと。
- 休日はできるだけ外出を避けること。また、人が多い場所へも極力行かないこと。
どうやら、出勤は必須のようですね。感染者が出たら倒産するほどの危機らしいのに。
自宅でのプライベート空間ですら外出を極力避けろと言うのに、出勤はしなければならない。なんだか矛盾を感じる感染症対策ですが、社員さんはF社長に意見を言えません。それに、会社が決めたことには従わなければいけないのです。



一人一人が緊張感と責任感を持って、節度ある行動を心がけてください。
F社長のその言葉に、社員さんたちは表面上は頷くも、心の中では「またいつものか」という声が聞こえてきました。
まがりなりにも社長なんだから、社員を不安にさせるようなこと言うのではなく、安心できるようなことを言ってほしいし、安心して仕事ができる対策と環境作りを考えてもらいたかったのですが、そんな器は弊社のトップにはないのだと落胆せざるを得ませんでした。
弊社最初の感染者はまさかの・・・
コロナウイルスの流行は緊急事態宣言が出されたりと、止まることがない状態が続きました。
感染者も日々増加の一途を辿っていました。
それから更に数ヶ月が経過した頃に、弊社にある事件が起きました。
その記念すべき1人目は・・・弊社のF社長でした。
感染者増加が報道されるなか、そんな流行の波に乗るかのようにF社長がコロナウイルスに感染してしまったのです。
出勤して社内チャットツールを立ち上げると、F社長から全社員に対してメッセージが届いていました。



コロナ陽性反応が出ました。
そして、F社長からの説明文に対して、社員一同の溜息が聞こえました。
- 日々気を付けていたので、感染の心当たりが全くないということ。
- 今は無症状の人がたくさんいるから、どこで感染するか分からないと医者に言われたこと。
この説明文を読んだ社員全員が思ったことでしょう。
「また嘘をついて、自分を正当化しているな。」
と。
そう皆が思うのには理由があったのです。
数日前からの社内での違和感
実は、F社長がコロナ陽性と判断された数日前から咳が多かったのと、声がかすれていたのです。
F社長はマスクはしていましたが、暑いのか鼻を出した状態でマスクをしたり、時々全部ずらしていたりと100%マスク状態は1日のうち半分だけだったと思います。
あれだけ全社員に「マスクは必着」と言っておきながら、自分はそんな状態のマスク状態ですからね。酷いものです。



風邪ですか?体調が悪いなら休んだ方が良いんじゃ・・・?



大丈夫です。
社員さんたちの心配する声も届かず、大丈夫だと言っていたF社長ですが、思えばこの時にすでにコロナウイルスに感染していたのでしょう。
というか、コロナ感染者が1人でも出たら弊社は倒産するとまで言っていたのだから、こういうときこそ休むべきだろうと思うのですが、F社長に直接言うことはできないのです。
仕事第一で生きてきた世代の人間の特性なのか、自己中なのか、はたまた鈍いだけなのか、自分は風邪を引かないという根拠のない自信を持っている人がどこの会社にもいると思います。
F社長はまさにその典型的なタイプで、毎日出勤して仕事に命をかけることこそが美徳であり、それが人として当然の姿だと説くのです。
結局、陽性になってちゃ意味ないですけどね。
更にもう1点の違和感ですが、コロナ陽性になったと言ってF社長が出勤しなかった前日、社員の1人が高熱で休んでいたのです。
その社員さんは高熱というだけで、検査はまだしていなかったようです。病院には行くと言っていましたが、そこから連絡がなく陽性なのか陰性なのかはその時点では分かりませんでした。
結局、少し後になってからその社員さんはコロナ陽性だったと判明することになりました。
ここで気づく人は気づくと思いますが、立て続けに近い日付で2人の人間がコロナ陽性になっているという違和感。
コナンくんならすぐ気付くでしょうね、ペロリと。
真実を知ったときは「やっぱりね」という、社員一同の溜息交じりの力なき言葉がありました。
コロナ感染を嘘で固める
F社長達がコロナ陽性になる前に飲み会に行っていたという事実。
それを知るきっかけは、ある社員さんの勇気ある発言でした。



実は先日、F社長たちと飲みに行っていました。飲みに行ったメンバーのコロナ陽性が発覚したときに、飲み会に行ったことは黙認するようにと連絡がきました。
まさかの口止めでした。
F社長は全社連絡で言っていましたね。「日々気を付けていたので、感染の心当たりが全くない」と。
その言葉が全くの「嘘」だった、ということがここで判明したのです。
F社長自身も分かっていたのでしょう。自分がコロナ感染症対策を打ち出しておいて、社内でコロナ陽性者1号になってしまった。自分自身の軽率な行動が原因になったと社員に知れたら示しがつかない。
飲み会には行ったけど、行っていないことにすればいい。
きっとこんなところなのでしょう。
F社長たちと飲み会に行っていたと語ってくれた社員さん曰く、緊急事態宣言が出てからもF社長から何度か誘われて、何回かは飲み会に行っていたとのことです。
よくよく考えれば不思議なことではありません。だってF社長はお酒大好き人間ですから。お酒がないと生きていけないしセクハラもできませんからね。
どうせバレるんだから、自分を正当化しようとせずに本当のことを言って謝れば良いのに、と思います。しかしF社長の性格上、よほどのことがない限り自分から謝ることはないというのも分かっています。
屁理屈じみたことを言うならば、F社長が打ち出した感染症対策には「飲み会には行くな」とは書かれていないわけなので、別に飲み会に行っても良いけどリスク承知の上での自己責任でね。と解釈することもできます。
自分の打ち出した対策に抜け道を作っておくことは相変わらずですね。
だから自己責任であれば別に良いと思います。そう、きちんと責任を取るなら。
でも今回はF社長の軽率な行動の結果、2人のコロナ陽性者を出してしまった。しかもその内の1人はF社長本人という始末。F社長は言っていました、1人でもコロナ感染者が出たら会社が倒産の危機に陥ると。
つまり、2人もコロナ感染者が出てしまった弊社は倒産必須…ってコト!?
これはいけない。「よし、そうなる前に転職だ!」ということにはなりませんでした。コロナ感染者が出たくらいで弊社は倒産なんてしない。そんなことは社員の誰しもが分かっていたことなので。
とはいえ、F社長が今回とった行動は評価されるものではありません。
どこの企業にも今も横行しているであろうものですが、本当に権力者でまともな人間っていないのでしょうか。こういうことの積み重ねがセクハラやパワハラやモラハラに繋がっていくのだろうと思ってしまいます。疲れますよね、働く側の精神が。
真実を語ってくれた社員さんには被害がいかないように、今回の件はF社長に意見することなく、社員一同の心の内にしまうということになりました。つまり、「F社長の茶番に付き合う」ということです。
元々なかったF社長への信頼度ですが、今回の件で更に信頼度が落ちたなと感じました。
F社長は、今後弊社が緊急事態になったとしても嘘を吐き、口止めをして、自分を正当化する可能性が高い。
コロナ禍に関してはまだまだ他にも出来事があるので、またそのうちに綴りたいと思います。


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