これが、弊社の改悪された退職金制度です。

皆さんの働く会社には退職金制度はありますか?
弊社は中小企業ですが、有るか無いかと言われれば「有り」ます。

中小企業では退職金制度そのものが存在しない会社も多いと聞きます。
もちろん、退職金制度がないこと自体は違法ではありません。
その分、給与や福利厚生で補っているケースもあるそうですが…果たして。

とりあえず、弊社には退職金制度があるんです。

あるんですが、さすが弊社と言うべきか。とんでもない改悪が実施されてしまいました。

目次

面接で言われた「安心して長く働けますよ」

僕が入社当時、「退職金制度もきちんとありますので、安心して長く働けますよ。」と面接で言われたことを覚えています。

1つの会社で長く定年まで働くならば、定年時に退職金が出ないというのは今の世を生きていくのに厳しいものだと思います。

入社当時にもらった資料には、定年まで働けば1,500万円以上は退職金を受け取れる計算になっていました。(役職で差額は出ます)

中小企業としてはかなりの高待遇で、僕もそれを将来的な安心材料の1つにして働き始めました。

1,500万円以上というのはあくまで定年までの満勤勤続ですが、3年、5年、10年といった勤続年数ごとの支給額もあり、長く働くほどしっかり評価される制度だったのです。

しかし、F社長に代わってから退職金制度の見直しが施行されてしまいました。

退職金制度「見直し」という名の改悪

過去の記事で、いくつか就業規則の改訂について書いてきましたが、今回の退職金制度の見直しもその改訂の1つになっています。

F社長は退職金制度の改訂をする前に、自ら布石を打っていました。

F社長

弊社にある貯金額を計算してみたが、お金がほとんどない。
今のままでは倒産する。
社員に給料が支払えないなんてことはしてはいけない。
社長には社員を守る義務がある。

何かあると二言目には「倒産する」と煽ってくるF社長ですが、このときも言っていました。

こうやってF社長は会社が危機的状況だとあらかじめ社員全員に煽ってから、「そのための施策を考えました」と発表するのです。これ、いつものパターンです。

会社が危機的状況であり、社長には社員全員を守る義務がある、だから「しかたなく」施策を実施するのだ、と。

はっきり言って、社員全員このパターンには飽き飽きしていて、「ああ、そうですか(いつものね)」という感じなんですが、社長に意見することはできないので受け入れるしかないのです。嫌なら退職するしか道はありません。

そして改訂された退職金制度。

資料を見た瞬間、社員全員が絶句しました。
退職金の金額が従来の10分の1以下になっていたのです。

ざっくり書くと、定年まで勤続したとしても貰える金額が200万円以下だったのです。

今までの退職金制度なら1,500万円ほど貰えていたはずが、この改訂で200万円以下という金額に変わってしまいました。

どんなにがんばって定年まで働いても貰える退職金は200万円以下。

これは絶望の数字となって社員たちにのしかかります。

かといって毎年貰える賞与が多いわけでもない。(賞与金額も改訂された)

「中小企業で退職金も賞与も貰えるだけましだ。」と言われればその通りなのですが、入社時に長く働くための安心材料として存在していたものが打ち消されてしまったという喪失感と、将来への暗く濁ったような気持ちと環境に対して、この会社の明るい未来が見えなくなってきたというのが実際のところです。

F社長

今までの退職金制度と比べて大幅に変わっています。
しかしこれが皆さんの給料を支払うことができるギリギリのラインであり、これが現在の会社の状況です。それほど会社は危機的状況です。

それなのにF社長が自分の給料は上げるように交渉していることを知っているのは、ごく一部の人間のみです。

F社長

ただし、この改訂した退職金制度は一時的なものです。
今後の売上次第では元の退職金制度に戻すことも検討しております。

今すぐには確約できませんが、あと数年後には今いる社員全員分の退職金を以前の退職金制度のものと同じくらいまでに戻して支払う算段はついております。
あと数年、あと数年我慢していただきたい。

検討…。信用ができない言葉の1つですね。

政治家もよく使ってますよね。「検討します」って。たしか検討ばっかりで、検討使(けんとうし)なんて呼ばれた首相もいましたよね。

弊社の社員も「検討します」という言葉に誰も信頼を置けない状態でした。

算段もついているっていうのも嘘くさいですよね。算段がついているなら今この時に改訂しなくても良いと思いますし。

F社長のことなので、おそらくこのタイミングで退職金制度を変更する「何かしらの理由」があったのだと推測しました。

そしてその推測は当たってしまったのです。

改訂の本当の理由

退職金制度が変わってもノーダメージな社員(新入社員や入社数年の社員)もいますが、10年以上勤続している社員ももちろんいました。

ちょうどこの退職金制度が改訂される前後で長期勤続していた社員が数名退職したのですが、その社員さんたちには「退職金制度の改訂が施行される前に退職届を提出した」ということで、改訂前の退職金制度が適用されて数百万以上の退職金が支払われていたことも後になって知りました。

そう、実はこのことが今回の退職金制度の改訂理由に繋がっていたのです。

その理由は、F社長の人間性を知っている人なら「なるほどね」と納得できる内容のものでした。

退職金制度の改訂が施行された本当の理由
  • F社長に代わってから長期勤続していた社員が退職し始めた。
  • 当初の退職金制度だと、毎回退職者に数百万円以上の退職金を支払うことになる。
  • これ以上退職者が出ても会社が損をしないように退職金制度を変更する必要があった。
  • そもそもF社長としては退職する人間に大金を支払いたくない。
  • 会社にはまだ蓄えの余裕があったが、更に長期勤続者が続けて退職するとなると、さすがに支払いが厳しい。
  • 入社してもすぐ退職するような人間には退職金を支払いたくないから、最低でも5~6年勤続してから退職金が発生するようにする必要があった。
  • 退職をするにしても会社都合退職ではなく自己都合退職にしたいので、どちらの退職理由でも支払われる退職金は同じくらいの金額にする必要があった。(一般的に会社都合退職の場合は、多めに退職金が支払われるため)

F社長の意見にそぐわない社員は排除して、F社長に従う社員を残し、何も知らない新規社員を入れることで社内環境を自分にとってより良いものにしたい。まるでガチャを回してSRを入手するような感覚です。

排除するにも退職金という障害があるので、まずはその制度を早い段階で改訂して、極力会社にダメージがないようにするということです。

F社長には、「会社というのは入社したら定年まで勤続するのが普通」という揺るぎない概念が存在しています。

そのため、定年まで勤続せずに退職する社員はF社長にとっての「裏切者」であり「怨敵」であり「変な人間」なのです。だからそんな社員に対してお金を支払いたくないという気持ちが生まれるのです。

今回の突然の退職金制度の改訂の裏にはこういうF社長の個人的な思惑があったというわけです。

それを知ったのは改訂から数年後。ほとんどの社員にとっては、この会社は退職金が少ないけど在るには在るんだな、という認識になっています。

なんせ長期勤続社員はほとんど残っておらず、勤続年数もまだ少ない社員が多くなりましたからね。

失われゆく信頼と悲壮感のある未来

退職金制度を大きく改訂してもダメージがあるのは、長期勤続している社員のみで、会社側にはメリットだらけです。

求人には「退職金制度あり」と記載できますし、面接で質問されたとしても「退職金制度はあります(大企業に比べては少ないけど)」と言うことができます。

まさに、F社長お得意の「嘘は書いてないし、言っていない」ですね。

入社してから初めて就業規則を見た時に分かる仕組みです。

実態は、「あるけれど実質ない」退職金制度になってしまったと言っても過言ではないかと思います。

残念なのは、この制度改訂が会社の経営上の判断はほぼなく、F社長の個人的な思惑によって施行されたということだと思います。

なぜ社員が辞めるのか。
なぜ新入社員が長続きしないのか。
その原因を直視せず、退職金だけを削ることで一時的に帳尻を合わせた結果がこの姿です。

原因から目を背け続けているという悲しい現実。

変わってしまった退職金制度が元に戻ることを期待することも儚い夢にすぎないのです。

これは弊社だけの話なのか、それとも中小企業という現実の一部なのか。
どちらにせよ、働く人の誠実さが報われにくい世の中だとしたら、現実ってやるせないものです。

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