ランジェリーショップを指差す少女

先日、エロティックなランジェリーショップの前を通ったときのこと。
前方から母親と手を繋いだ2~3歳くらいの女の子が歩いてきた。
その子は、ランジェリーショップの前にあるマネキンさんを指差して一言、

「ママー、あれ、やりたい」

あれを・・・やりたい・・・だと!?
あの下着をつけたいってことか!?
あんな過激なセクシーブラをつけたいってことか!?
どこからどう見てもまだ子供じゃないか。
それともこの世界の基準は変わったのか、僕がおかしいのか?
もしかして僕はこの時間軸の人間じゃないのか!?

いくつもの考えが浮かんでは消え、また浮かんでは消えを繰り返していた。
混乱した頭でも、分かっていることは一つ、

最近の2歳児は下着にもこだわる!!

おそろしい・・・。
げに恐ろしき世の中よ・・・。

いや、だが待って欲しい。
少女はブラをつけたマネキンさんの方を指さして言った。
もしかしたら、
「あれ、やりたい」というのは、
「あのマネキンを、殺りたい」ということなのではないだろうか?
マネキンのくせに、何ド派手なブラジャーつけてんだよ!
あんたらマネキンは成長できない。
けれど、私は成長過程。
そしてあんたらマネキンは動けない。
けれど私は動くことができる。

「あんたらマネキンが、私に勝てる要素が一つも見当たらない。ただ、そう・・・現段階で一つだけ勝っている点があるならば、それは・・・セクシーブラをつけているということだッ!!どういうことなのか分かるな?お前を殺ってそのブラを私が有効的に使ってやるってことだよッ!ヒャッハーッ!」

少女の目がカッ!と見開いた。
そして母親の手を払い、一直線にマネキンに向かっていった。
ような気がした。

しかし母親はそんな少女の言葉を無視して歩く。
そう、母親だって分かっているのだ。
まだ子供にはブラは早いって。

ただでさえ変態さんの多い世の中、2歳児がブラなんてつけてたら何が起こるか分からない。
ランジェリーショップの前を通り過ぎる親子、
ランジェリーショップの前を通り過ぎる僕、
2つの運命が交差することはなかったけども、更に分かったことがあった。
そう、そのランジェーリーショップの入口にはキティーちゃんのガチャガチャが置いてあったんだ・・・。

「これを、指差してたのか・・・」

だよね。そりゃそうだよね。
ランジェリーショップで子供の目を引くものなんて・・・これだよね。
僕は胸をなでおろした。

「よかった、今日も世界が平和で・・・。僕が狂っていたわけじゃなくて・・・」

去っていく親子。
その瞬間、少女がこちらを見て「ニヤリ」と笑ったような気がした。
僕はゾクリとして、

「まさかあの少女・・・見据えていたのか・・・?未来を・・・!?」

なんて、これから何か物語が始まりそうな気がしたけども、そんなことも特になかった。

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